ワーキングマザー。ワーキングママ。ワーママ。
今、働く母親はいろいろな耳障りのいい名称で呼ばれ、かっこいい女性の代表のように持ち上げられていますよね。
外でバリバリ働き、家庭では愛情深い、スーパーウーマン。
仕事、家庭、子ども。すべてを手に入れた女性。
私の妻も大手IT企業に勤め、一人娘を育てるワーキングマザーです。
そして彼女のママ友たちもまた同じように産み、育て、働いています。みんな必死にがんばっている。
私は朝、娘を保育園に連れて行くんですけれど、ママたち、みんな大変ですよ。
就業時間に遅れてはいけない、でも、子どもは気ままで言うことを聞いてくれない。
焦って、イライラし、子どもを叱りながら登園する姿をよく見ます。
そして、そんな自分に多くのワーキングマザーが、深い罪悪感を抱いている。
どうして私はうまくできないんだろうって。
子どもに恵まれ、働く機会に恵まれ、自立した現代女性のロールモデルのような彼女たちは、じつのところ、働く母親として葛藤を抱えながら、かけがえのない幸せを満喫できずにいます。
子どもにも職場にも、後ろめたい
たとえば、保育園のお迎えが遅れれば、子どもに寂しい思いをさせたのではと罪悪感を感じますよね。
同僚より早く職場を後にするたび、後ろめたさを感じます。
子どもの世話を夫や両親、義両親に任せては申し訳なさを感じてしまう・・・。
毎日、ワーキングマザーには「罪悪感」や「後ろめたさ」が付きまとい、ストレスとなって仕事や家事を妨げているんですよね。
フランスの心理学者シルヴィアンヌ・ジャンピノはこう述べています。
女性は、二つの側からのしかかる罪悪感に耐えなければならない。
仕事をしているときは子供に、子供の世話をしているときは仕事に。
働く理由がお金であれ、やりがいであれ、「がんばっている」のになぜ、ワーキングマザーたちは罪悪感を感じてしまうのでしょう。
罪悪感を生み出す「こうあるべき」
私たちは「母親とはこうあるべき」「妻とはこうあるべき」「働く人とはこうあるべき」だと思い込んでいます。
誰が思い込んでいるかと言うと、夫であり、祖父母であり、親戚であり、ご近所さんであり、職場の上司や同僚や、つまり社会全体がです。
そして何よりワーキングマザー自身、たくさんの「こうあるべき」を抱えています。
「子どもは母親が家庭で育てるべき」「家事は女性がするべき」「長時間働く人が評価されるべき」・・・etc.
両親や先生がそう言うから、上司がそう振るまうからと、無意識に受け入れている社会常識が、彼女たちをがんじがらめにしているんですよね。
これはアルバート・アインシュタインの言葉です。
常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである。
女性たちは「こうあるべき母親像」で自分を縛りつけ、男性たちもまた「こうあるべき母親像」を妻や職場の女性に押し付けています。
どんな罪悪感であれ、私は・・・、あなたは・・・「こうあるべきだ」という思い込み、偏見のコレクションが引き起こしているんです。
働く母親は「どうあるべき」?
あなたはどんな常識の数々、「偏見のコレクション」を持っていますか?
また、あなたの「こうあるべき」は、本当に真実でしょうか。
ここでは、ワーキングマザーの罪悪感を生み出している、偏見のコレクションを明らかにしましょう。
気づくことで、意識に変化を起こし、余計な罪悪感で苦しまなくても済むようになるからです。
まずは、思いつくままに下記の文章を完成させてみてくださいね。
- 「私は母親として~であるべきだ」
- 「私は母親として~すべきだ」
- 「私は妻として~であるべきだ」
- 「私は妻として~すべきだ」
- 「私は社会人として~であるべきだ」
- 「私は社会人として~すべきだ」
- 「私は会社員(自営、フリーランス)として~であるべきだ」
- 「私は会社員(自営、フリーランス)として~すべきだ」
- 「私は子どもに対して~であるべきだ」
- 「私は子どもに対して~すべきだ」
では次に、上記で完成させた文章ひとつひとつについて、その思い込みに気づくためのエクササイズを行います。
これから紹介する手順は、バイロン・ケイティ著「ザ・ワーク 人生を変える4つの質問」より引用(簡略化)しています。
「人生を変える4つの質問」
テーマ:「 (上記で作成した文章) 」
(例:わたしが働いているので、子どもはさみしい思いをしている。※ )
- 「それは本当でしょうか?」
(例:はい。保育園に行くのを嫌がって泣くから。) - 「その考えが本当であると、絶対に言い切れますか?」
(例:いいえ。・・・泣かないときもあるから。) - 「そう(※)考えるとき、あなたはどのように反応しますか?」
(例:とても切なくて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。仕事中も胸のあたりにストレスを感じて、いたたまれない。) - 「その考え(※)がなければ、あなたはどうなりますか?」
(例:すっきりとした気分で、身体が軽くなる。仕事のときは仕事に集中できるし、子どもと一緒のときも償いたい衝動にかられないだろう。) - 文章を置き換える。
原文:「わたしが働いているので、子どもはさみしい思いをしている(※)」
a.文章の内容(※)を反対に置き換える。
(例:わたしが働いていなければ、子どもはさみしく思わない。)
b.主語を置き換える。
(例:子どもが働いている(保育園にいる)ので、わたしはさみしい思いをしている。)
c.自分自身に置き換える。
(例:わたしが働いているので、わたしはさみしい思いをしている。)
6. 置き換えた文章のなかに、原文(※)よりも真実味がある文章はありますか。その新しい文章は、あなたに何を示していますか?
検証する
4つの質問によって、寂しがっているのは子どもではなく、母親自身かもしれないと気づくかもしれません。
認識の誤りに気づけば、抱えていた罪悪感は崩れさるでしょう。
こうした一度も検証されていない思い込みを抱えていると、息苦しさと罪悪感を抱え続けることになりますから。
エクササイズの開発者バイロン・ケイティはこう述べています。
~すべきだ、~すべきではない、という考えがなければ、私たちは現実をありのままに見ることができ、その結果、明確で効果的で健全な行動をとることができます。
「罪悪感」をやわらげ、母親という役割にしばられず、柔軟なライフスタイルを作れるようになるんです。
働くママは、成熟した女性である
「幸せなワーキングマザーになる方法(NTT出版)」で、自らも働く母親である著者のキャシー・L・グリーンバーグはこう書いています。
母親は、単に母親というだけの存在ではありません。
独自のアイデンティティや目的意識、人生に対する展望を持ったひとりの成熟した女性です。
女性が働きながら子どもを育てる。
このことに私たちはまだ、受け入れ準備が出来ていません。
社会制度やインフラ面はもちろん、考え方や感じ方の面においても。
現代女性は親世代とは違う社会状況、価値観にさらされて生きています。
お手本になるような存在が少ないなかで、もっと働きやすい、もっと育てやすい生き方を一人ひとり模索していると言えるでしょう。
女性に活躍してほしい、という国としての要望も高まっていますよね。
管理職への登用など、実際にそういう機会も増えつつある。
でもまだまだ矛盾だらけなんですよ。
今は女性の生き方が変わる過渡期にある気がします。
私の妻はキャリアウーマンで、そんな彼女を好きになりました。
私の一人娘もママを見ながら、きっと結婚しても働きつづける気がします。
娘が大人の女性になったとき、ワーキングマザーが本当の意味でキラキラと輝ける時代が来ますように。
そして今、ワーキングマザーであるあなたが余計な罪悪感にとらわれず、正々堂々と、今ある幸せを満喫できることを心から願っています。
《参考》
・仕事を持つのは悪い母親?(シルヴィアンヌ・ジャンピノ著)
・ザ・ワーク 人生を変える4つの質問(バイロン・ケイティ著)
・幸せなワーキングマザーになる方法(C・L・グリーンバーグ、B・S・アヴィグドル著)